視線

最近、毎朝利用する通勤電車の中で視線を感じる。
女である。
若い女で、大学生と思われる。
女は、私がおりる駅のひとつ前で乗ってくる。
ほぼ、毎日いっしょになり、初めて視線を感じてからもう二週間ほどになる。
これは、どう考えても気のせいなどではござらん。
ひょっとして、私に気でもあるのだろうか。
いや、まさか……なあ。
何だか気味が悪くもあるので、逆に相手をよく観察してみることにした。
若い女。顔は、まあごく一般的な水準には達しているだろう。
特にタイプではないし、見覚えはやはりない。
背は低い方だろうか。
気になるのは、視線の送り方だ。
極めて自然に、私が気付かないようにと苦心しているようだ。
その感じが、かえって気になってしまうのだが。
私を見張っているようでもある。
これ以上ほうってはおけない。
勇気を振り絞って、話しかけてみることにした。


「すいません。私のこと見てますよね?」
「はあ?何ですか。見てなんかいませんよ。」


そう言って逃げられてしまった。
次の月曜日、女はあらわれなかった。
それっきり、女を見かけることはなかった。
しかし、彼女も命拾いしたものだ。
今後も続くようなら、消してしまわなければならないところだった。
私の正体は誰にも知られてはならないのだ。
うひひ。

(´-`).。oO(違う・・・何か違う。
駄目だこれは。恥ずかしい。夢オチばりに恥ずかしい。