他者

その不安をどうしたらおさめることができるだろうと考えたのだ。
もし私がわるい人間ならば、てっとりばやく相手の信用をえようとして
みじかく、こうかてきなことばや、心理テクニックというようなものをもちいるだろう。
あえておおくの時間や労力をついやすわけがあらぬゆえ。
わるい人間と差別化をはかりたいのなら、わるい人間がしないことをしなければならん。
そこで私はあえて、てまと時間をかけてみずからの素性をかたることで
その素性がまことであるか、いつわりであるかに関係なく
おのれがわるい人間ではないということを、しめしたかった。
のみならず、かかるはらづもりをあかしたのも、おなじこころだ。